冬がはじまるよ

午前11時過ぎ、何気なくバスに乗ると…
車内は、いつになくポカポカしていた。

…あれ?


最初は、窓から射し込む日差しを存分に浴びているからかな?
と思ったけれど。
よくよく考えてみたら、この温かさは暖房が原因だった。

(そうか。もう、そんな時期なんだ…。)


暖房が入っていると分かった瞬間、急に私の頬が火照った気がした。
うん。多分、これは…体温計が予想以上の高熱を示したときに、より症状が重く感じたりするアレと同じだ。



それから数時間後…
日の沈んだ辺りはすっかり冷え込み、日中ちょうどよかったカーディガンが、夜風のせいでちょっぴり寒く感じるようになった。

(やっぱり、ジャケットを羽織ってくるべきだったかなぁ。)


とりあえず、腕時計をチラチラ見ながら早歩き。

(うーん。)


体感温度が下がると分かっていながら、つい…
苦しくならない程度にバス停まで走ることにした。


…あれ?
不思議と、歩いているときより風の冷たさは感じない。


ポカポカした身体で少しだけ息を弾ませ、日頃から運動不足気味の私は直ぐに走る足を止めた。
そして、また腕時計をチラチラ見ながら早歩きに切り替えた。



息が完全に落ち着いた頃、再び…私はバスに乗った。

…あれ?


午後9時過ぎに乗った車内は…
すっかり、いつもどおりのノー暖房に戻っていた。(えー?)



デスヨネー。